RE科目「文豪を訪ねてⅡ」報告②
24.01.22
「日本一楽しく学ぶ」をコンセプトに設置された聖徳大学文学部の参加型体験授業「RE科目」(REとは、Reality Experience:人生におけるとても貴重な本質的体験という意味)のご紹介です。
今回はRE「文豪を訪ねてⅡ」の2回目。井伏鱒二展を開催中の県立神奈川近代文学館(横浜市中区山手町)を訪れました。
作品の精読とゆかりの土地への訪問から、文学者の真実に迫るRE「文豪を訪ねて」。秋学期の「Ⅱ」では芥川龍之介と太宰治がメインテーマです。
その太宰治の師、井伏鱒二の没後30年を記念した大規模な展覧会が、日本を代表する文学館の一つ、神奈川近代文学館で開かれていました。
太宰が初めて井伏に対面したのは学生時代でした。「会ってくれなければ自殺してやる」と手紙を出して、半ば無理やりに会ったのです。以来、太宰は井伏にさんざん面倒をかけました。
原稿を読んでもらい、アドバイスを受けました。外国の古典を読むように助言されました。薬物中毒に苦しんだ時には入院の世話をしてもらいました。再起を期した時には富士山麓に誘われて背中を押されました。結婚の世話もしてもらいました。太宰作品の愛読者には小説『富嶽百景』などに登場する井伏の姿が記憶に刻まれていることでしょう。
最寄り駅に集合して、港の見える丘公園へ。海を眺めて港町の風情を楽しんだり、噴水のある公園を散策したりしながら、公園内の文学館をめざしました。
文学館ではまず、学芸員の方から井伏と太宰の関係についてレクチャーを受けました。「太宰との関係に重点を置いて解説してほしい」という勝手な要望を文学館は全面的に受け入れてくださり、丁寧に2人の関係を追ってくださいました。
会場では井伏の生涯と文業を一望し、その交流関係を示す写真や手紙、絵画や焼き物などがふんだんに出品されていました。太宰治に関しても、充実した展示が楽しめました。
薬物中毒で入院した太宰の様子を報告した、井伏から佐藤春夫にあてた手紙は新発見の資料でした。さらには井伏の長男と太宰がハサミ将棋をしている姿を井伏が描いた絵、太宰が井伏たちにあてた結婚時の誓約の手記、井伏から太宰夫人にあてた手紙。
知識人の自意識の苦悩を描く太宰。庶民の喜怒哀楽を低い声でうたう井伏。人柄も作品も対照的ですが、いやそれだからこそ、2人の関係はきわめて興味深いです。
会場ではさらに、井伏と小林秀雄、川端康成、志賀直哉らとの交流の様子も楽しめました。安岡章太郎や三浦哲郎など後輩作家との関係も浮き彫りにされていました。
文学者は単独で存在しているのではありません。先行作家のさまざまな影響を受けて、一人一人の仕事があります。その生々しい文学史を実感できた一日になりました。
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