短期大学部・総合文化学科 │ 聖徳大学

【コラム】 “絹”のおはなし(その2)

22.08.31


今月、世界的に著名な日本人デザイナーお二人が亡くなりました。お一人は5日に普遍的な衣服を追い求めた三宅一生さん(84歳)、もう一人は11日に「蝶」を描き続け、みんなが着たいと憧れる服を作られた森英恵さん(96歳)です。絹(シルク)の話しをする前に、謹んでお二人のご冥福をお祈り申し上げます。

さて、前回の「“絹”のおはなし」は、家蚕繭と野蚕繭の比較をしましたが、繭糸繊度(繭糸の太さ)を表わす単位をデニール(d)とし、家蚕繭の繭糸繊度を2.8dと説明いたしました。しかし、蚕は動物ですので、化学繊維のように紡糸装置から均一に糸を作ることはできません。繭の外層(吐糸始め)、中層、内層(吐糸終わり)で繊度が異なり、中層で最も太くなっています。

繭から生糸を繰製することを製糸と言いますが、高温のお湯で繭を煮て(煮繭)、絡まっている糸を緩めながら、数本の繭糸を纏めて1本の生糸にします。

前述のように繭糸は1本ごとに微妙なバラツキがありますので、数本を束ねることで平均化を図っています。繭7~8粒ものを21中生糸、9~10粒のものを27中生糸と呼びます。製糸絹業界では繊度に「中」(なか)を使用しています。中とは生糸の太さを表わす単位で、例えば、前述の21中生糸は、17~24dのバラツキの中で21dが大部分を占め、おおよそ21dであることを表わしています。

絹を構成する成分はフィブロインとセリシンの2種類のたんぱく質から成り立っています。1本の繭糸は2本のフィブロインが芯になり、その外側をセリシンが覆っている形状になっています。通例の絹織物では、このセリシンを除去して染色します。この工程を「精練」と呼び、石けんやアルカリ塩、たんぱく分解酵素、高温高圧の水などを使用します。精練は染色の前工程ですが、精練後の絹糸は白度を増し、フィブロインの三角断面が適度な鏡面反射と干渉効果などの光学的効果を生み、優雅な光沢を発生させます。

染色では不要なセリシンは、セリンやトレオニン、アスパラギン酸やグルタミン酸などの活性側鎖をもつアミノ酸に富み、化粧品業界では貴重な成分として取り扱われています。セリシンは人間の皮膚細胞に近いことがわかっており、美白や保湿に高い効果を示しています。絹は紫外線を吸収すると黄変するという欠点がありますが、これは紫外線防止効果があることを示しています。

絹繊維は鮮やかな発色性と光沢性、さらにしなやかさ(ドレープ性)が特徴であり、機能面では吸湿性がよく、ベトツキ感がなく、糸が細いのに強度があり、風合も柔らかく肌になじみやすい繊維で、紀元前より貴重な繊維として歴史のある高級素材なのです。

図1 三宅一生のロゴ(ネクタイ・絹100%)

図2 繭糸の断面 (皆川基「絹の科学」)

 Fフィブロイン  Sセリシン

図3 繭糸吐出始めと終わり

(間和夫「わかりやすい絹の科学」)

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