短期大学部・総合文化学科 │ 聖徳大学

【コラム/文芸】花咲爺

20.12.22

皆さま、こんにちは。
12月21日は冬至でしたね。かぼちゃをいただいたり、柚子湯に入ったりして、無病息災を祈ったかたも多いのではないでしょうか。
本格的な冬の到来を前に、もう春が待ち遠しくなっています。春には、梅・桃・桜・菜の花・木蓮・馬酔木などなど、色とりどりの花が咲きますね。

枯木が芽吹いて、花をつける冬から早春にかけての風景は、まるで樹木の死と再生のドラマを見ているようです。
そこで思い起こされるのが、日本五大昔話の一つである「花咲爺」。今日は、「花咲爺」を一緒に楽しみましょう!

「花咲爺」は室町末期~江戸初期の成立と言われています。正直者の爺が飼っていた犬のおかげで宝物を得たり、枯木に花を咲かせ殿様からご褒美をもらったりして豊かになるといったストーリーはよくご存じでしょう。隣の欲深い爺は、正直者の爺の犬を殺してしまうため、その報いを受けるといった勧善懲悪のお話になっていて痛快です。この昔話には、「致富譚」「隣の爺譚」「動物報恩譚」などの要素があり、昔より子どもに親しまれてきました。

古いものとしては、江戸時代の赤本「枯木に花咲かせ親仁」や、滝沢馬琴の『燕石雑志』(1811年)に載る「花咲翁」がよく知られています。明治時代には、巌谷小波 (いわやさざなみ) の『日本昔噺』(東洋文庫に有り)にも収録され、人口に膾炙しました。


さて、日本の昔話は幼い頃より絵本や紙芝居で親しんできて、凡そのストーリーは知っているつもりですが、詳細となるとうろ覚えです。

正直者の爺が飼っていた犬を、隣の爺は殺して埋め、そのしるしに〈松の木〉を植えます(赤本。『燕石雑志』では、道のほとりの小松の下。松の木はすぐに大きく成長する)。正直者の爺は松の木を貰い受け、今度は臼を作りますが、これまた隣の爺に臼を焼かれてしまい灰になってしまいます。その灰が枯木を再生させ花を咲かせるのです。松は常緑樹で「神待つ木」としてお目出度い木だからでしょうか。興味深いですね。

一方、巌谷小波 『日本昔話』「花咲爺」の犬は四郎(しろ)という名があります。榎樹(えのき)の土の下を「ここ掘れワンワンワン!」と啼くので、掘ってみたら小判が出てきたとあります。亡くなった四郎が埋められたのは隣の爺宅の榎樹の下です。この榎樹が臼になり、灰になります。灰が咲かせたのは梅や桜の花でした。さらに、殿様秘蔵の、花が咲かなくなった桜の木をも再生させます。(因みに、隣の爺は牢屋に入れられます。)

これまで枯木に咲いた花が漠然と「桜」だと思ってきましたが、本によっては、梅や桜、躑躅、百日紅、山茶花、いろいろの花(赤本)とあり、桜に限定されないこともあります。

さらに面白いのが、隣の爺の結末です。絞めあげられたり、牢屋に入れられたり、『燕石雑志』では、懲らしめられて頭から流血し、そのまま病の床につき亡くなってしまいます。

「花咲爺」は明治時代、美しい「ちりめん本」にもなりました。本学のコレクションにもあります。

日本の昔話は子どもが読むものと決めつけないで、ルーツを探ったり、諸本を比較したりすると、立派な卒業研究になります。

枯木にぱっと桜の花が咲く光景を幻視しながら、春の訪れを心待ちにしている今日この頃です。皆さまもご自愛専一にお過ごしください。

*画像は、上から「枯木に花咲かせ親仁」(2枚、国立国会図書館デジタルコレクションより転載)、「花咲爺」(『新制小学国語読本出典文抄』所収『燕石雑志』、国立国会図書館デジタルコレクション)、ちりめん本(2枚、特別展覧「外国語に訳された日本昔噺―ちりめん本の美しさ―」平成14年8月より転載)

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