短期大学部・総合文化学科 │ 聖徳大学

【コラム】“絹”のおはなし(その3)

22.12.22

今年はコロナウィルスの猛威やロシアのウクライナ侵攻、安倍晋三元首相銃撃死やエリザベス女王崩御など、暗いニュースが続きました。

このコラムで、これまで2回「“絹”のおはなし」をいたしました。第1回目は蚕の種類、第2回目は絹糸の種類でした。今回は工程が進み、「絹織物」のおはなしをいたします。

絹織物は、その特性である、柔軟な感触、温雅な光沢などを十分に発揮するには、その原料蚕糸に含まれているセリシンを除去しなければなりません。(衣料用の絹織物でも、シホンやオーガンジーなどのように、特殊な味を持たせるために、セリシンを除去しない織物も、まれにあります)。このセリシンを除去するのを操作、すなわち、精練工程は、糸から織物が出来上がるまでの、いくつかの工程のうち、どこかで行われます。すなわち、織られる前の糸の状態で行うか。また、織り上げて布の形になってから行うかであります。このように絹織物は、その精練工程を行う時期によって、製造方式が2つに大別できます。

「生織物」は、生糸や玉糸、柞蚕糸のような蚕糸を精練しないで、生(き)のまま、たて糸・よこ糸に使って、織り上げた後、精練する織物です。(織り上げ後、精練しないものも、まれにあります)。別名、後練織物ともいいます。この方式で製造する織物は、ふつう精練後、引き続き、漂白・仕上げなどの工程を経て、白地の製品として出来上がるものです。これは、いわゆる白生地といって、このまま一応商品となり、取引の対象となるものです。この白生地は、用途によって白生地の他、無地染め、または捺染などをいたします。

生織物は、織物の種類によって、織物組織はいろいろなものが使われます。また、糸もたて糸・よこ糸とも無撚糸を使うもの、たて糸かよこ糸の一方だけに撚糸を使うもの、あるいはたて糸・よこ糸の両方に撚糸を使うものがあります。代表的な生織物は、羽二重や縮緬などがあります。

 

 ここでちょっとコーヒーブレーク!「羽二重」といえば、何十年前になりますが、私に初めて子供(女の子)が生まれたときに、繊維に携わっている自分に記念になるものはできないかと思い、新潟県五泉市の機屋さんから羽二重の一種の広巾チェニー(鯨尺・1尺9寸5分)を購入し、女の子のピンクとお祝いの紫を染色し、2種類の子供の名入りの絹の風呂敷を作りました。出産祝いを下さった方にお返しの際に、作成した風呂敷を一緒に差し上げましたところ、大変喜ばれたことを思い出しました。

「練織物」は、生糸や玉糸のような蚕糸にヨリをかけてから精練し、この精練糸を使って、織り上げ、仕上工程を経て製品とするものです。この製造方式では、織る前に綛(かせ)糸の状態で精練するから、別名、先練織物ともいいます。練織物においては、原糸を精練後、染色した練染絹糸を使って織るものが多く、すなわち、色無地物、縞(しま)・格子(こうし)織物、また、地組織と違った組織と色糸によって模様を織り出す紋織物などを作るのが普通です。代表的な練織物は、タフタ、ブロケード、八端、ファイユ、お召、博多織、銘仙、錦、紬などたくさんの種類があります。

以下に、「はぶたえ」、「ちりめん」、「つむぎ」のJIS繊維用語の内容を記載します。
① 羽二重(はぶたえ habutae)JIS L 0206 1295
 たて糸,よこ糸に無よりの生糸などを使用した主として平織の後練織物。
② ちりめん(縮緬 crepe)JIS L 0206 1259
 たて糸に生糸,よこ糸に強ねんの生糸を使用し,精練によってしぼを現した織物,又はこれに類似の織物。
③ つむぎ(紬 tsumugi)JIS L 0206 1262
 真綿を手つむぎした糸をたて,よこ糸に使用して手織でかすり,しま,白などに織りあげた先練織物,又はこれに類似の織物

今年も残すところあと10日となりました。新しい年になりますとすぐに成人式があります。新年は和服を着る機会が多くなります。その際には、このコラムの内容を思い出してください。
それでは、みなさんよいお年をお迎えください。

参考文献:絹織物の常識(日本絹業協会)
     五泉織物工業協同組合資料
     丹後織物工業組合資料
     鹿児島県大島紬技術指導センター私信


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