【コラム】Qなっつ
21.04.08
ご入学、ご進級、おめでとうございます。本学では4月6日より授業が始まりました。このコロナ禍の中で学生の皆さんが安心して対面授業を受講できるよう努力します。
昨冬のブログ「続・終着駅」(銚子駅)では、千葉県の水産業や醤油産業について記述しました。千葉県は全国でも有数の農林水産物王国で、全国順位の高い品目が目白押しです。落花生もそのひとつで、2018年我が国の落花生の総生産量は15,600トン(殻付き)で、県別生産量の第1位は千葉県の13,000トン、シェアではなんと83.3%になっています。
1876年に牧野萬右衛門氏が栽培を始めたのが、千葉県の落花生栽培の始まりとされています。千葉県でも特に北総地域は県内生産の中心地区となっています。台地上にある八街市は、水源に乏しい土地柄ですが、この土壌が落花生の生育には、最適と言われています。八街市における落花生の栽培は、明治末期から急速に発展し、現在も特産品として有名です。
落花生といえば千葉県というイメージが強いですが、茨城県の中南部でも生産されており、茨城県の生産量は1,530トン、シェアは9.8%となっており、千葉県と茨城県で全国の生産量の約93%を占めています。
ところで、2016年に日本全体で消費された落花生の量は約90,800トン(むきみ換算)です。国内産の落花生は9,800トンですから、落花生の輸入量は81,000トンとなり、消費量の90%以上が輸入されていることになります。輸入落花生の内訳は、原料落花生31,800トン、煎り落花生5,300トン、バターピーナツ38,300トン、ピーナツバター等3,900トン、その他加糖品1,700トンとなっています。
現在千葉県で栽培されている落花生の主な品種は、焙煎落花生向けとして、千葉半立(ちばはんだち)、ナカテユタカ、Qなっつ(きゅーなっつ)の3種、茹で落花生向けとして、郷の香(さとのか)、おおまさりの2種、計5種とされています。
焙煎落花生向け品種
千葉県産落花生で一番代表定な食べ方は、殻付きのまま焙煎しただけの素材を味わう食べ方です。外国産ピーナッツは基本的に加工されることが多いようですが、千葉県産落花生はそのままでも美味しいのでこの食べ方が主流です。
①千葉半立(ちばはんだち)
1952年千葉県農業試験場で在来品種から選抜育成した品種で、1953年県奨励品種に採用されました。草型は半立で、株は横に広がり、晩生で収量性は高くないが、煎豆の食味は独特な風味があり、とても香ばしく、甘味が強い濃厚な味で落花生王国千葉県を代表する品種です。味の評価は高いですが、栽培が難しく収穫量も少ないため高価です。国産落花生では最高品種とされています。千葉県作付面積の66%を占めています。(2017年)
②ナカテユタカ
「関東8号」と「334A」とを交配し、1979年千葉県農業試験場で育成した品種で、同年に県奨励品種に採用されました。草型は立性で、開花期から収穫適期まで80日前後の中生、多収、良食味品種ですが、収穫適期を過ぎると子実の品質、食味ともに低下しやすいです。子実はやや大きく、充実、色沢や粒揃いが良く、煎豆の食味もあっさりとした甘みがあり県産の落花生でも低価格で、味が良く、器量良く、お求め安い、三拍子揃った落花生の優等生です。千葉県作付面積の26パーセントを占めています。(2017年)
③Qなっつ(品種名:千葉P114号)
「郷の香」と「関東96号」を交配し、2013年に千葉県農林総合研究センターで育成した品種で、2015年に品種登録出願が公表されました。やや早生から中生の多収品種で、草型は立性で、株元に莢が集中する。莢は白くて、甘みが強く、煎豆に適しています。品種名は「Pナッツを超すQナッツ。(アルファベット順でPの次はQ)」からついたそうです。ナカテユタカよりも病気に強いため収穫量が安定するようになりました。
なお、市場に流通している国産の焙煎落花生はほとんどこの3種類ですが、千葉半立、ナカテユタカ、Qなっつを見分ける方法は色を見る事です。殻を割って渋皮を剥いて、その渋皮の裏を見てください。茶色なら千葉半立、白色ならナカテユタカまたはQなっつです。ただ、ナカテユタカとQなっつを見分けるのは難しいといわれています。
茹で落花生向け品種
茹で落花生は8月末ぐらいのとても早い時期に収穫されます。焙煎する落花生は掘ってから畑の上で2週間ほど乾燥させますが、茹で落花生は掘ってすぐ茹でます。落花生を早掘りし、かつ乾燥の工程がいらないので新豆が早くに食べられます。焙煎用落花生とは調理方法も保管方法も大分異なります。
④郷の香(さとのか)
「ナカテユタカ」と「八系192」とを交配し、1995年に千葉県農業試験場で育成した品種。1996年に県奨励品種に採用されました。早生の多収品種、草型は立性で、株元に莢が集中します。莢は白くて、熟度が揃う。茹で落花生に適し、食味は良好で、千葉県作付面積の3パーセントを占めています。(2017年)
⑤おおまさり
「ナカテユタカ」と極大粒品種「ジェンキンスジャンボ」とを交配し、2006年に千葉県農業総合研究センターで育成した晩生品種で、2010年に品種登録がされました。子実の重さが一般品種の約2倍と極めて大きい落花生です。茹で落花生に適し、甘みが強くて柔らかく、食味が優れています。2009年から一般栽培されており「大きな莢(さや)で食味が勝る」ことから「おおまさり」という名前になったそうです。
美味しい落花生の選び方は、必ずしもさやがきれいな落花生が美味しいとは限りません。さやがきれいなものは、収穫時期が早すぎる場合があります。落花生の品質は、さやの色の濃淡等の外見では一概に判断できません。良くできた落花生は、カルシウムを充分吸収し、さやも固くなっています。落花生は品種により味が異なり、「千葉半立」は味が良く、特に美味しい品種と言われています。
実は、しわが無く、渋皮の色が、濃くはっきりしているものが良い実です。赤い渋皮にたっぷりと栄養分(ビタミンC、E)があります。実の大きさは「ナカテユタカ」の方が「千葉半立」より一回り大きくなっています。両品種とも実が丸く大きくなりすぎたものは、収穫遅れの場合が多く、適期収穫したものより風味が落ちます。特に「ナカテユタカ」は収穫が遅れると品質低下の大きい品種です。
落花生の栄養成分は、渋皮にはポリフェノールの一種、レスベラトロールが多く含まれるため渋皮ごと食べるのがお勧めです。渋皮が気になるという方は「Qなっつ」が他の品種よりも渋皮が薄く、渋皮ごと食べやすいという試験結果が出ています。また、茹で落花生には様々なミネラルやビタミンが含まれています。特にビタミンEとナイアシンは、枝豆よりも豊富です。
ピーナッツ3話
①松戸駅東口のペデストリアンデッキで週2日程度でしょうか、朝10時頃から12時頃までご夫婦が農産物を売っています。販売品目は落花生が多く、地元の方が良く購入しています。ご夫婦にお聞きしたところ、営農場所は茨城県牛久市、栽培品種は半立でしたので、1袋購入いたしました。500円で420g入っており、大きさは不揃いでしたが、自分で食するには充分なお味で、大変リーズナブルでした。
②古い話で恐縮です。ピーナッツの愛称で呼ばれていたザ・ピーナッツは、1941年4月1日愛知県生まれの双子姉妹デュオ・女優です。1959年「可愛い花」でデビュー、「情熱の花」「恋のバカンス」「恋のフーガ」などの曲でヒットを飛ばし、国民的アイドルになりました。女優としても活躍し、1961年7月に公開された怪獣映画「モスラ」(特技監督:円谷英二氏)では、小美人役で「モスラヤ モスラ」と歌っていたのを覚えています。1975年2月に現役引退し、姉伊藤エミさんは2012年6月15日、妹伊藤ユミさんは 2016年5月18日に亡くなりました。
③これも古い話です。1976年2月に明るみに出た世界的な大規模汚職事件で、日本の商社からアメリカの航空機製造会社に渡された領収書にピーナッツ100個などの暗号が記されていました。検察の調べでピーナッツ1個が100万円の意味とわかりました。その他ピーシーズ(複数形)、ユニットなどの暗号領収書も出て、その年の流行語となりました。
落花生(ピーナッツ)についていろいろなことを書きました。本学の人間栄養学部には九州大学都甲潔先生の研究を応用した脂質膜型味覚センサー((株)インテリジェントセンサーテクノロジー製)が設置されています。これらピーナッツの味の違いが測定できれば面白いと考えています。
参考文献 写真 等
農林水産省「作物統計」、財務省「通関統計」
一般財団法人 全国落花生協会 ホームページ
千葉県農林水産部農林総合研究センター落花生研究室
千葉県農林水産部流通販売課販売・輸出促進室
鈴市商店 ホームページ
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