(27)『うつほ物語』の正月
11.12.29
ある年の正月、朱雀帝の妃、仁寿殿の女御が、娘婿の仲忠に対して詠んだ歌があります。
今日のごと わが思ふ人と まとゐして いく世の春を ともに待ち出でむ[新編日本古典文学全集②578頁]
「まとゐ」は団らんの意です。今日のように、私が大切に思っている人と団らんし、末永く春を一緒に迎えたいものです、と仁寿殿の女御は願っています。平安貴族もお正月には一族が集い、新年の挨拶をしました。
毎年、お正月には大切に思っている人と会い、一緒に春を迎えたい、という気持ち。時代や身分が異なっても、そして『うつほ物語』が架空の物語であるということも飛び越えて、家族を思う気持ちに、皆さんも共感されることでしょう。
「誰とどこでどのような時間を過ごしてゆくか」、「自分が何をしてゆくか、どんなことに多く時間を使ってゆくか」ということを、しみじみと考えた一年でした。
大切な人が誰もいない、というあなた。諦めないで、身近な人と根気よく人間関係を築いていきませんか。いつか、きっと見つかりますよ。
今年もあとわずかとなりました。来年が穏やかで幸せな年でありますように。