心理・福祉学部 社会福祉学科

【JUST IN】 第2回『福祉の役割と「感染症コロナ」』~ 考えましょう!~

20.04.19

皆様こんにちは。

今回は社会福祉学科の湯原裕子先生が人を教え、育て、守る専門職を目指す皆さんと一緒に考えたいと養護教諭の視点から投稿してくださいました。

私たちは家で過ごすことを余儀なくされ、学校には子どもがいない状況かもしれません。でも養護教諭は考えます。そんな時でも学校は子供や家庭といかに繋がり支えられるかと。今直接関わることが難しくても、いま―ここでできることがある。そんなアプローチを先生は具体的な例を挙げながら教えてくれます。

このような視点や考え方は人を支える福祉専門職に共通して必要なことなのかもしれません。各々の場所でちょっとの時間、物理的には離れているけれどつながりが整う方法を考えてみませんか。

 

新型コロナと養護の現場ー子供を守る基本

社会福祉学科 専任講師 湯原裕子

 

子どもの命と健康を守る専門家として学校に勤務している養護教諭が,学校の感染症対策においてもその中心的な役割を担うことは改めていうまでもありません。かつて経験したこともない新型感染症の猛威に直面し,子どもに安全な学習環境を提供しなければならない学校は何をすべきか,そして私たち養護教諭には何ができるのか,全国の養護教諭が苦悩しています。学校再開に向けて,養護教諭の役割をどう果たすのか,次の3点について一緒に考えていきたいと思います。

 

<①専門性を生かした感染症対策と保健指導>

まず最優先に考えるべきことは,子どもの命と健康を守ること,つまり感染予防対策です。学校には様々な健康レベルの子どもが集団生活を送っています。中には感染症に罹患することにより,既往症が重篤化するなどの配慮を要する疾患を抱える子どももいます。三密を避けられない学習環境において,そしてマスクや消毒薬が不足する中で,いかに感染を予防するか。養護教諭は文部科学省や教育委員会,そして専門機関等からの通知や情報を注視し,地域や学校,子どもの実情に合わせて正しい知識や根拠に基づく対策を専門性を生かして講じていく必要があります。同時に子どもへの保健指導が一層重要性を増してくるのではないでしょうか。手洗い・換気・咳エチケットはもとより,免疫力を高める基本的な生活の仕方についても指導の徹底が必要です。またこれらの一つ一つの予防行動が自分の命を守るだけでなく,家族や友達,そしてつながりのあるすべての人の命を守ることになるという,個人の行動と社会とのつながりや影響を考える教育的機会になるのではないでしょうか。

 

<②保健室の機能の維持>

保健室で通常取り扱う健康問題と感染症対策では,判断や処置において大きな違いがあります。例えば子どもが何らかの傷病にみまわれ,保健室で休養する場合を思い浮かべてみましょう。保健室を訪れる子どもの訴えは,何らかの疾患や傷病を決定づけるまでの症状はそろっておらず,極めて初期症状もしくは微症状であることが多いのです。また発達段階によっては表現があいまいであったり,また自覚症状や痛みの感じ方に個性の違いもあったりするため,検査施設のない保健室においては,痛みやつらさの回復と経過観察を目的として休養させます。しかし感染症に罹患している場合はどうでしょう。保健室に留め置くことで他の子どもへの感染リスクを高めることになります。何らかの症状を訴えた子どもに対して感染症罹患の可能性を視野に入れて対応するとなると,隔離し早期に早退させる対応をせざるを得ません。保健室は傷病によって学習困難になった子どもを一旦休養させ,幸いにも回復できたならばまた教室に戻すことができます。つまり子どもが教育を受ける権利を保障しているのです。その機能を維持することはできなくなります。さらにだれでもいつでも無条件で入室できる保健室による居場所の機能も維持することはできません。また子どもは大人の様子から自分自身の痛みやつらさを訴えなくなるかもしれません。感染症対策が最優先ではありますが,子どもには自分の体からのSOSに目を向け,発信してほしい。そのために養護教諭はかすかな言葉にも耳を傾けられたらと思います。

 

<③子どもの人権保障>

自宅に留まることを余儀なくされた子どもたちについて,学力や体力の低下,また生活リズムの乱れやネット依存などの問題が取り上げられています。さらにテレビ視聴が多くなった子どもたちの目に,新型コロナウイルスに罹患した患者さんが謝る姿はどう映るのか心配になります。「病気になることは悪いことなんだ」「病気になったら謝らないといけないんだ」「病気になると罰を与えられるんだ」という,未熟な子どもたちの健康観を揺るがすメッセージになっていないでしょうか。健康と病気は対局にあるものではなく,連続体であるという概念やWHOの「単に病気でないということではなく,肉体的・精神的・社会的にwell-beingな状態」という健康の概念を思い起こし,社会全体の取組を通して健康を実現するというヘルスプロモーションの考え方に基づく健康教育の必要性を再認識しています。テレビからの情報が不安や恐れを生み,相手への信頼や思いやりの心を弱め,偏見や差別を生みます。そしてそのことが学校ではいじめなどの人権問題に発展することが危惧されます。登校再開後に,咳をする友達を見て「オマエ,コロナじゃない?」との発言から体調不良を訴えにくい雰囲気が生まれたり,濃厚接触者になり登校できない子に対して差別的なうわさが流れたり…しかしそのような心無い言動の背景にも,その子の抱える不安や困難があることを忘れていけません。新型コロナウイルス拡大に伴い,すべての子どもがそれぞれの立場や状況で人権の侵害という問題に直面していることに思いを馳せたいと思います。

湯原裕子先生のプロフィール
公立小学校で19年間の養護教諭として勤務。本年4月より聖徳大学に着任。1年生の担任。
研究テーマは、保健室の機能や養護教諭の専門性について。社会福祉学科での担当科目は学校保健・学校救急看護など。

今、在宅でのマイブームは手作りマスクと万華鏡折り紙(写真はどちらも先生の自作)

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