(2) 『うつほ物語』子どもの玩具①(蔵開下巻)
11.06.28
『うつほ物語』の主人公「藤原仲忠」は、ある時、まだ幼い東宮(=皇太子の敬称)に贈り物をします。平安時代の皇室や貴族の玩具にはどのようなものがあったのか、見てみましょう。
右大将(=仲忠)は東宮の若宮に、をかしき弄びもの、参りもの調ぜさせたまひ、雛の糸毛、黄金造りの車、色々に調じて、人乗せ、黄金の黄牛(あめうし)懸けて、破子(わりご)ども、白銀、黄金調じて、入れものいとをかしくして、駒に人乗せなどして設けたまへり。
これらは、雛遊び(人形遊び)用の作り物です。雛用の糸毛車(=屋形を様々な色糸で飾った牛車)や黄金作りの車は様々な色で飾られ、人形を乗せてあります。しかも、その牛車には、黄金作りの黄牛(=毛があめ色の上等な牛)が懸けてあります。また、白銀や黄金で作った破子(=食物を入れる容器)などには、とても面白い物を入れてあります。駒(=小さい馬)に人形を乗せたものもあります。
黄金製なんて、ずいぶん豪華ですね。人形もいくつもありそう…。破子に入っていた面白い物って何でしょう?これらの玩具は皆、仲忠が東宮のために、特別に作らせた玩具なのです。
昔、リカちゃん人形なら持っていましたけど、病気になったから買ってもらえた唯一の人形でした。
・新編日本古典文学全集『うつほ物語②』(小学館)581頁