【コラム】夏断(げだち)
20.07.27
赤穂義士の一人である大高源吾(忠雄、源吾は通称)は、子葉と号した俳人でもあった。吉良邸討ち入りのために江戸へ下向する直前に遺した俳句選集『二ツの竹』には、交流のあった宝井其角も句を寄せていた。その子葉の一句に「灸(やいと)にて侘言(わびごと)申す夏断(げだち)かな」がある。
夏断とは、夏精進(げしょうじん)とも言い、仏教でいう夏安居(げあんご)の期間中(旧暦4月16日からの3か月、インドの雨季の期間)、在家の信者の家庭で酒を慎み、魚・肉などを断って精進する風習を指す。源吾は母思いだった。夏断の間、好きな酒を断つことができず、灸を据えて意志の弱さを母に侘びようというほどの意味だろう。
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、居酒屋へ足を向けにくい人も多かろう。自宅で飲んではいるだろうが、何となく酒断ちに近い。しかも、夏断の期間より長くなってしまった。東京都では、PCR検査の母数が格段に増えたからだと説明するが、新規感染者数のグラフは高止まり。まさに「訳あっても訳あっても棒の山」だ。
居酒屋を始めとする飲食店の経営は逼迫している。「ウイルスによるべ取られてもらひ金」はあるものの、今後の見通しはやはり暗い。
不要不急が唱えられる中、生活のために外へ出て働かねばならないから電車に乗る。マスクを付けていたって、「咳をしてもジロリ」とくるから、咳払い一つにも気を遣う。朝から晩までマスクが外せなければ、「次の朝二の字二の字の紐の跡」となる。
せめて自身や世相を茶にしながらこの災厄をやり過ごすしかあるまい。まだまだ明けそうにない今年の夏断である。
(注)本文中にパロディとして引いた元の句は以下のとおり。
・分け入っても分け入っても青い山(種田山頭火 1882-1940)
・朝顔に釣瓶取られてもらひ水(千代尼 1703-1775)
・咳をしてもひとり(尾崎放哉 1885-1926)
・雪の朝二の字二の字の下駄のあと(捨女 1633-1698)
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