心理・福祉学部 社会福祉学科 │ 聖徳大学

学科長コラム②                     「同じ釜の飯を食う」―信頼関係構築の第一歩

23.08.01

 
                              社会福祉学科長 山田千香子

  まもなく8/8~8/11の日程で、1年生の学外研修「志賀高原研修(3泊4日)」が実施されます。これまでコロナ禍で実施が見送られていましたので、4年ぶりの再開になります。1年生は入学後まもない4月初旬に2泊3日のFC(Freshman Camp・導入教育)を経験し、5月には半日のチャレンジディと仲間との体験活動を積み重ねてきました。大学生活になじんだうえで今回の行事に臨みますが、期待と共に不安も大きいかもしれません。これら一連の行事は必修科目「聖徳教育Ⅱ」に当たり、聖徳大学教育の根幹を成しています。この教育の根幹には何があるのでしょうか。

 1年生は高校時代にオンラインでの授業体験や友達とのオンライン「つながり」を経験してきています。入学後は初めから対面授業を受けてきました。さらに「直接会うこと」や「初めての体験を共有する」学外研修は何をもたらすのでしょうか。

志賀高原を進むはとバス

 ネットの記事になりますが、他者への信頼関係の構築について、元京都大学総長の人類学者山際壽一先生が次のように述べていました。

 「人間は、視覚と聴覚を使って他者と会話すると脳で「つながった」と錯覚するらしいが、それだけでは信頼関係までは担保できないと言えます。本来、信頼感というものは『身体の同調』でしか作られないものだからです。身体の同調とは、具体的にいえば、誰かと一緒に同じものを見る、聞く、食べる、共同で作業をする、といった五感を使った身体的な共感や、同じ経験の共有のことです。なぜなら人は五感のすべてを使って他者を信頼する生き物だからです。その時、鍵になるのが、嗅覚や味覚、触覚といった本来「共有できない感覚」なのです。他者のにおい、一緒に食べる食事の味、触れる肌の感覚。こうしたものが他者との関係を築くうえで最も大事なものになります。これには当然、時間がかかります。その代わり、言葉のやり取りだけではとうてい得られない強い信頼を互いの間に築き上げることができるのです。」

 学科長コラム①では「親の背中」ということわざについて触れましたが、今回は「同じ釜の飯を食う」ということわざのご紹介となります。学外研修は新たな体験はもちろん重要ですが、「同じ釜の飯を食う」ということわざが示すように、学外研修という非日常性のなかで、知らず知らずのうちに五感を使って築いていく信頼関係の構築とその強さが想像できるのではないでしょうか。「同じ釜の飯を食う」とは、①ある程度の期間、他人同士が同じ家で起居を共にする、ないし、学校や職場で生活を共にする。または、②同じ共同体が同じものを食べることによって、共同体としての帰属意識を持つこと。あるいはそれを強化すること。等を指しています。美味しいものを一緒に食べる幸福感、感動的な経験を共有する幸福感を経ての信頼関係は何物にも代えがたいものになります。

 多くの卒業生から「聖徳愛」「母校愛」の強さを感じます。その思いはこのような聖徳教育によって、培われてきたものかもしれません。今年の志賀高原研修が無事に終了し、大きな成果とつながることを願って、ペンを置くことにします。

キャンプファイアー





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