【JUST IN】第5回『福祉の役割と「感染症コロナ」』~考えましょう~
20.04.25
皆様こんにちは。
今回は4月から着任された、でも、なぜかみんな知っている!?池田先生が今、注目されニュース等でも取り上げられている介護の現場について報告してくださいます。
医療現場はコロナとの戦いの最前線、最後の砦といわれ、注目されています、またそれに対する感謝の気持ちが各所からいろいろな形で示され話題になっています。(本当に大変な状況で職務を全うされておられると思います)
今回、池田先生がこの後、書かれていますが、その医療の大変な状況下にある高齢者、病気や障がいを持つ人たちの日々の生活を支えている仕事の一つであr介護について具体的に示してくださることと思います。(ほかにも日々の生活を支えている仕事はもちろんありますが)
聖徳の卒業生も今現場の最前線で働いていることと思います。役所や社会福祉協議会の窓口、保育の現場で働き、また施設や病院、地域で直接援助をしているであろう事が想像できます。私たちは陰ながら、皆さんの頑張りを応援しています。一緒に4年間勉強してきているからこそわかります。専門性を発揮し、知識と技術、科学的根拠に基づき日々の支援をしているのだろうと。
生活を支え、専門性を発揮し人々の生活、命を守る「縁の下の力持ち」がいることを各々の場所でちょっとの間、考えてみませんか。
「新型コロナと介護の現場―抱える問題」
社会福祉学科 准教授 池田静香
介護現場で働く人たち(介護従事者)の感染症対策とは
介護従事者の立場から感染症について考えると、介護従事者にとって感染症対策は、コロナウイルスが初めてのことではありません。インフルエンザやノロウイルス、すべて感染症ですから、毎年感染症対策を行っていると言っていいでしょう。介護従事者が感染症を恐れるのには訳があります。それは、対象者である高齢者や障害者は免疫力がそれほど高くないため、感染してしまうと重症化してしまうからです。そして、それが拡大すれば、施設や事業所の運営自体が滞る恐れがあるからです。そのため、感染源を持ち込まない・広げないために予防接種をしたり、手洗い、うがい、掃除などを徹底したりして日々の介護にあたっています。
介護現場にみる新型コロナ対策の経緯
介護福祉士養成校は2月から3月にかけて介護実習を実施する学校が多くあり(聖徳大学もそうです)、施設でのコロナウイルス感染に対しての経緯を直接見聞きすることができました。1月に授業が終わり、いざ、実習へ!という時は、コロナウイルスよりもインフルエンザを恐れていました。実習が始まって2月の下旬には、ご家族の面会を遠慮していただく施設が増えてきました。これは、感染源を持ち込ませないためです。実習生受け入れの対応も中止を宣告した施設も出てきました。施設も感染症の広がりに伴い厳戒態勢を整え、職員も毎日検温をするよう徹底されていきました。私たち教員も検温をしたり、公共の交通機関を使わず車で行くなど、感染源を持ち込まないように気を付けて実習巡回を実施していきました。現在も介護従事者たちは、基本的な感染症対策を通常通り実施するとともに、毎日の検温や、できるだけ人込みを避けつつ出勤をする、休日は家にこもるということをして、自分が感染源にならないよう細心の注意を払いながら介護を提供しています。訪問介護の介護従事者にしても同様です。「自分が感染症の第1号になってはいけない」という介護をする人間としての自覚が強くあるのではないかと思います。また、緊急事態宣言により、子育て中の職員は、子どもを預けるところがなく、休みを申し出るしかない人も出てきています。そのため、人手不足の状況を作り出してしまっています。非常に厳しい状況のなか、穏やかな顔をして高齢者に接しているのは『プロ』以外の言葉は当てはまりません。
施設入居者の高齢者と新型コロナ、その影響とは
では、高齢者の立場からはどのような問題が起こっているのでしょうか。まずは、施設で生活されている高齢者の場合です。ご家族との面会は、楽しみの一つですが、面会ができずストレスを感じる人もいます。また、毎日テレビから流れるコロナウイルス関連のニュースで心を乱す人もいます。介護職員の人手不足により、日々のケアが十分でなくなったり、心のケアがもっと必要になった人たちも出てきていると想定されます。
在宅で暮らす高齢者と新型コロナ、その影響とは
在宅で過ごされている高齢者の場合、訪問介護やデイサービスを利用されている方が多くいます。今回の緊急事態宣言でデイサービスは休業対象にはなっていませんが、感染拡大を恐れ自粛しているところがあります。それは施設の中でも、送迎車の中でも3密になることが多いためです。実際にデイサービスが利用できなくなると、どのような問題が起こってくるのでしょうか。デイサービスを利用する人たちにはさまざまな目的があり、その一つに入浴があります。「デイサービスで入浴できないなら自宅のお風呂に入ってもらえばいいじゃないか」と思うかもしれません。ですが、実際にその風呂場に行ってみると浴槽が深すぎてまたぐことができないとか、片麻痺の状態で手すりもなく、浴槽から立ち上がることができないとか、様々な問題が出てきます。デイサービスの入浴室は福祉用具が整っていて、安全に入浴することができるようになっています。しかし、ご自宅は違います。そうした違いのなかで安全な入浴を行うことはとても難しいのです。また、利用者の中には様々な人と会って話すことを目的とされている方もいます。一人暮らしの方は、他者と話をすることで気持ちが晴れ、食事も進むからです。そして、ご家族にとっては介護から解放されるリフレッシュの時間となっています。このように、デイサービスにはさまざまな役割を担っており、介護が必要な高齢者が自宅で生活するための手助けをしています。デイサービスが休業してしまうと、安心してお風呂に入ることができない、ずっと一人で気分が滅入ってしまう、家族は24時間介護につきっきりで疲弊してしまい、場合によっては虐待に発展してしまう可能性もあるでしょう。訪問介護を中止することもこれに近いことが想定されます。そうならないために、感染拡大予防のために自粛されている中、高齢者のライフラインを守るために休業しないでいるのです。
超高齢化社会で危惧すること
何よりも今回の問題で危惧するのは、自粛することで健康な高齢者であっても体力が落ちてしまわないかが心配です。身体を動かさないとあっという間に筋力が落ちてしまい、寝たきり状態を招く可能性があります。また、認知症を患っている方も、この状況が理解できず、それが原因で認知症を進行させてしまう可能性もあります。高齢者にとって日々の暮らしが変わるということは生命に直結するほどのダメージがあるということをもっと多くの人に知ってほしいです。
おわりに
介護に関連するすべての事業所・施設は、コロナウイルス感染というハイリスクを背後に感じながら、介護を必要とされる高齢者が日々の暮らしを継続できるようにできる限りの感染症対策を実施しながら介護サービスを提供しています。聖徳を卒業した福祉専門職たちも、日々現場で奮闘していると思います。大学教員一同、皆様に最大限の敬意を払うとともに、皆様の健康をお祈りしております。そして、一日も早い収束を祈り、普段の生活に戻れますように。
池田静香先生のプロフィール
介護福祉士として、特別養護老人ホーム、デイサービス、在宅介護支援センター(現:地域包括支援センター)に勤務。その後聖徳大学短期大学部、聖徳大学、城西国際大学にて介護福祉士育成に従事してきました。この度、三年ぶりに聖徳大学に戻ってきました。名前が違うのは、本来の苗字になっただけです(笑)。本学での主な担当科目は、生活支援技術、介護過程、介護総合演習など。研究分野は、要介護高齢者の介護福祉
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