聴いてみよう、この1曲〜民族音楽学の授業で学ぶブルガリアの女性合唱~
20.07.13
皆さん、こんにちは。音楽学科教員の髙松晃子です。
私は、音楽学科2年生の春学期に開講される教職必修科目、「民族音楽学概論」を担当しています。
このブログでは、「ヨーロッパ」の回で扱ったブルガリアの合唱曲をご紹介しようと思います。
日本の小中学校の音楽科の授業で諸民族の音楽を扱うようになって久しいですが、中には苦手意識を持っている方もいらっしゃいます。この授業では、「好きにならなくてもいい!多様性を理解しよう」をモットーに、世界の音楽を実践的に学んでいます。ヨーロッパの回では、ブルガリアのこの曲を聞いて、採譜(いわゆる耳コピですね)してもらうことから始めます。五線譜でなくてもよいのです。楽譜は五線譜とは限りませんから。
Ansambul Trepetlikaによる《ネデーリャ夫人は有名に Prochu Se Moma Nedelya》
授業ではBulgarian Voice Angeliteによる音源を使用しています。
なかなか素敵な曲ですね。これから結婚式に向かう幸せな女性を歌ったものです。まず学生たちが苦労するのがこの拍子。4でも3でもない…どこで切れるかわからない…ということで、無理やり小節線を引っ張って数を合わせようとするのですが…。この曲、実は11拍子なのです。ブルガリアは地域的に西アジアの影響が強く、拍子の取り方もトルコやその周辺地域の影響を受けています。なんども繰り返して聴いて、最後にはできる限り真似をして合唱します。発声は、もちろん地声ですよ。
ただ、注意しなければならないことが一つ。このような女声合唱は、農村の伝統を集めてプロの音楽家が編曲し、民族衣装を着た女性が聴衆に向けて歌うための、「ステージアート」なのです。伝統の香が失われる、と批判する人もいますが、こうしなければブルガリアの歌はなくなってしまったかもしれません。
授業では、耳慣れない音楽と格闘して頑張った学生たちへの「ご褒美」として、最後にこんな曲も聴きます。まだ見ぬ恋人への思いを歌う少女の祈りが込められている、理屈抜きに美しい曲です。「好きにならなくてもいい!」けれど好きにならずにはいられない、そんな歌ですね。
The Philip Koutev Choirによる《娘は祈る Malka Moma》
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