音楽学部 │ 聖徳大学

聴いてみよう、この1曲~40声のモテットを一人で多重録音~

20.06.07

皆さん、こんにちは。

前回のブログでは、山本まり子先生が「声楽史」の授業で扱った、ルネサンスの作曲家トマス・タリス(1505頃~1585)による《我、汝の他に望みなし》(Spem in alium=スペム・イン・アリウム)が主役でした。YouTube動画ご紹介しました。
?「聴いてみよう、この1曲~音楽史の授業で味わうルネサンスの響き~」(2020年6月6日)

40ものパートからなるこの作品。実はこれを、おひとりで演奏された先生が音楽学部にいらっしゃるのです。

松平敬先生――。今年度は声楽の「音楽実技A」「音楽実技B」を担当されています。

タリスの楽曲中、最後に40声部全体で演奏する部分を、松平先生がパートごとに分割演奏されたのがこちら!

ソロを重ねて録音したとは、にわかには信じがたいほど。
この録音について、松平先生ご自身にお話をうかがってみました。

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コロナで外出が難しくなり、実際に多くの人が合唱や合奏をすることが難しくなりました。このような状況でもアンサンブルをしたい人たちが作った、インターネットを介したリモート合唱やリモート合奏の動画を見たことのある人も多いと思います。それを可能にするのが、新しい音を次々と重ねて録音する多重録音の技術です。

このタリスの音源は40声部すべてを私一人で歌い、多重録音したものです。動画にあるのはその一番最後の部分ですが、すべてのパートが休みなく歌うので、この1分ほどの部分だけでも、全パートを録音するのに40分はかかる計算になります。もちろん、すべてを1回歌っただけで何一つ間違えずに演奏することは不可能なので、実際は録音にもっと長い時間がかかります。

この曲の録音は本当に大変で、その後の編集作業にも気が遠くるほどの手間がかかりましたが、巨大な建築物のようなこの音楽を自分一人だけで作り上げることは、大いに創造性をかき立てられる経験となりました。

高品質な多重録音をするためには、効果な機材を買いそろえる必要がありますが、音質にあまりこだわらず、歌とピアノを重ねる、2~4声部の短い合唱曲を一人で多重録音する程度のことなら、無料、または安価なアプリを入手すれば、スマホ一つでも可能です。対面でのアンサンブルが難しい今だからこそ、簡易な多重録音に挑戦してみるのも面白いかもしれません。(松平 敬)

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2回連続で、タリスの40声のモテットをめぐるブログをお届けしました。
450年以上前の音楽にも、いろいろな角度から光を当てることができるのですね。

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