繊維製品の抗菌防臭加工・制菌加工
21.09.30
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本日で多くの地域に発出されていた緊急事態宣言等が全面解除となりますが、これからもコロナウイルスと共に暮らしていかなければなりません。今回はコロナウイルス感染症の拡大で一躍注目を浴びている繊維製品の抗菌防臭加工や制菌加工についてお話しいたします。
人の健康に影響を与える病原微生物は細菌とウイルスに分けられます。細菌とウイルスとの違いは、細菌は細胞を持ち、自己複製能力を持った微生物です。一つの細胞しかない単細胞生物です。大きさは、通常1㎜の1/1000の単位の㎛(マイクロメートル)が用いられ、光学顕微鏡で見ることができます。
一方、ウイルスは、蛋白質の外殻、内部に遺伝子(DNA、RNA)を持っただけの単純な構造の微生物です。細菌のように栄養を摂取してエネルギーを生産するような生命活動は行いません。大きさは、細菌よりもはるかに小さく、さらに1/1000の単位の㎚(ナノメートル)が用いられ、電子顕微鏡が必要です。
次に、細菌は、糖などの栄養と水があり、適切な環境のもとでは、生きた細胞がなくても自分自身で増殖できます。しかし、ウイルスは、たとえ栄養と水があったとしても、細菌とは異なり、ウイルス単独では生存できません。ウイルスは、自分自身で増殖する能力が無く、生きた細胞の中でしか増殖できません。
ウイルスに感染した細胞は、ウイルスが増殖して多量のウイルスが細胞外に出てくるため死滅します。そのため、宿主の細胞が次々と死滅して生物は耐えることができずに死亡に至ります。
JIS L 0207繊維用語(染色加工部門)にある抗菌防臭加工の定義は、「繊維上の菌の増殖を抑制し、防臭効果を持たせる加工」。制菌加工は、「繊維上の菌の増殖を抑制する加工。一般用途では、黄色ぶどう球菌、肺炎桿菌、大腸菌、緑膿菌などを対象としている。」となっています。しかし、制菌加工は、一般家庭等で幅広く使用される繊維製品を対象とする一般用途のほかに、医療機関,介護施設等で使用される業務用繊維製品を対象とする特定用途があります。
加工に使用される薬剤は有機系と無機系があり,加工方法としては後加工,練り込み,コーティング加工などがあり,有機系は後加工,無機系は練り込みに使用されることが多く、合成有機系薬剤は第4級アンモニウム化合物,ピグアナイド系,フェノール系など,天然有機系薬剤はキトサン,ヒノキチオール,カテキンなど,無機系薬剤は銀,銅,亜鉛などの化合物が使用されています。
加工効果を評価する試験方法は,JIS L 1902およびISO 20743に規定されています。(一社)繊維評価技術協議会が認証しているSEKマーク(S:清潔、E:衛生;K;快適)が貼付できる試験対象菌株は,抗菌防臭加工では黄色ブドウ球菌(臭気、化膿)、制菌加工の一般用途では黄色ブドウ球菌,肺炎桿菌(疾病)が必須菌で,特定用途ではこれにさらにMRSA(院内感染)が追加されます。また,大腸菌(臭気、中毒),緑膿菌(化膿床ずれ)やモラクセラ菌(臭気)がオプション菌として追加できます。評価は対象製品ごとに定められている洗濯回数に従い,抗菌防臭加工では抗菌活性値が2.2以上、制菌加工では抗菌活性値と標準布の増殖値の比較により,一般用途では抗菌活性値が増殖値以上,特定用途では抗菌活性値が増殖値より大きいことが定められています。急性経口毒性試験,変異原性試験などの加工剤や皮膚貼付による製品の安全性試験も必要です。
細菌による感染症の治療法は、一般的に抗生物質が有効とされています。しかし、ウイルスによる感染症の治療法は、一般的に抗生物質の効力はありません。ワクチン接種が進められていますが、ワクチンは無毒化したウイルスを体内に入れて免疫力を高め、実際に感染したときに急激にウイルスが増殖することを抑えます。
感染症に対する予防策は、まず清潔を保つことのほか、免疫力を低下させないことが大切と言われています。そのため、栄養バランスの良い食事、基礎体力をつけること、規則正しい生活を過ごすことが基本となり、日頃からできる予防策として、うがいと手洗い、部屋の換気や温湿度の調整などを習慣化しましょう。
参考資料
https://www.toholab.co.jp/info/archive/1834/:(株)東邦微生物病研究所
さわやか繊維:(一社)繊維評価技術協議会
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