【コラム】「さ・し・す・せ・そ」
20.04.06
新型コロナウイルス感染症の拡大により、本学も入学式が延期になり、初々しい新入生の姿をまだ見ておりません。
本日は年度初めなので、年度末に掲載を予定していた鉄ちゃんシリーズ「終着駅」は次回にして、繊維製品の「さ・し・す・せ・そ」についてお話しいたします。
まず「さ・し・す・せ・そ」というと、調味料の「さ・し・す・せ・そ」はご存知ですね。
さ・砂糖
し・塩
す・酢
せ・醤油
そ・味噌
です。
調味料としての詳しい話は、当科にフードマネジメントコースがありますので、門外漢の私の説明は止めておきます。しかし、これだけは覚えておいてください。醤油生産額の都道府県ランキング(平成29年工業統計・経済産業省)の第1位は千葉県で 571.9億円です。日本全体の生産額の約3分の1、第2位の兵庫県 288.2億円の約2倍となっています。
次に、家事の「さ・し・す・せ・そ」もありますね。
さ・裁縫
し・躾
す・炊事
せ・洗濯
そ・掃除
です。以前は女性の「さ・し・す・せ・そ」といわれたこともありました。しかし、本来家庭における日常生活の仕事は男女が協働して行うことですから家事にしたようです。
さて、私がこれからお話しする「さ・し・す・せ・そ」は、繊維製品(被服)の大敵な「さ・し・す・せ・そ」です。
さ・酸素、酸化
し・紫外線
す・水分
せ・微生物
そ・(thermalサーマルのこじつけ)熱
です。
さ:酸素は我々が生きていくに必要なものですが、これが厄介となるのです。酸素によって繊維製品が酸化されると劣化が起きます。また一例として、昇華した酸化防止剤が酸化窒素ガスとの反応により繊維が黄変します。
し:紫外線による劣化と黄変です。絹や羊毛などのたんぱく繊維やナイロンが黄変し易いことはご存知でしょう。たんぱく繊維を構成しているアミノ酸の中で、フェノール性水酸基を持ったチロシンやトリプトファンなどのアミノ酸が黄変しやすいという研究報告もあります。また紫外線により被服が変退色したクレーム事例も聞きます。
す:必要以上に水分がある状態は、繊維の劣化や弱化などが起こります。またカビが発生しやすく、カビの種類により赤、ピンク、青、黒などの色素が出て、斑点状のしみができます。
せ:微生物によっても繊維に着色が起こり、劣化が始まります。シュードモナス(Pseudomonas)属の緑膿菌の発生などがこれにあたります。
そ:サーマル(thermal)のこじつけで、熱のことです。熱褐変や熱分解による劣化が始まります。
時折、古墳の中から鮮やかな色彩の出土品があったなどのニュースありますが、古墳の中は、酸素(空気)の動きも少なく、紫外線も届かず、水分も少なく一定、温度も高くならないため、微生物の繁殖も少なく、被服の保管場所として大変良い環境となっています。
したがって、被服を長期保管する時は、酸素を少なくするため脱酸素剤を用い、紫外線を防ぐアルミ蒸着した袋などに収納し、シリカゲルなどで水分を除去して、低温のところに保管すれば、微生物の発生も少なくなります。
これから高温多湿の梅雨や猛暑になると、被服はカビや虫害などが起こりやすくなります。なお、合成繊維は天然繊維に比較して、カビや虫害などが少ないといわれていますが、しかし、食べ物カスの付着や汗分などが残っていると、合成繊維でもカビや虫害などが発生しやすくなります。被服は着用後ハンガーに掛けて風を通すことや、汚れたら洗うのではなく、着たら洗うようにするなど、日々のケアーが必要です。
被服に対して丁寧な取り扱いをして、長く使うようにすれば、今巷で言われている被服の廃棄ロスを防ぐことに繋がり、環境にやさしく安心安全な衣生活が送ることができます。
私はファッション・造形デザインコースで、染色加工や被服整理の講義や実験を担当しています。
ご希望があれば皆さんの学校にお伺いして、このようなお話をいたします(^^♪