第5回 客員教授毒蝮三太夫先生 講義:あなたが理想とする高齢者像とは?(最終回)
24.12.25
皆さま、こんにちは。 社会福祉学科助手の和田です。
年内も余日少なくなり、なにかと気ぜわしい毎日ですがいかがお過ごしでしょうか。
12月23日(月)客員教授毒蝮三太夫先生による5回目の講義(最終回)が行われました。
総まとめということもあり、先生自身の気迫が感じられました!!
学生のレポートから「表現と伝達の難しさ」について振り返りをされる中で、11月に神奈川県で起きた介護殺人を例に挙げて語られていました。
毒蝮先生は、朝日新聞の記事(一部)から「高齢者が高齢者を介護する「老々介護」。神奈川県横須賀市で11月、夫が介護していた妻の首を絞めて殺害したとされる事件が起きた。近所付き合いもあり、一度は介護サービスにもつながったが、最悪の結末を避けられなかった。」と老々介護の先を悲観した高齢者夫婦の悲劇を読み上げました。
(参照:老老介護、抱えきれずに 社交的な妻が認知症に、84歳の夫は「先を悲観」:朝日新聞デジタル 最終閲覧:2024年12月25日)
介護殺人とは、「60歳以上の当事者が死亡し、介護疲れや将来への悲観などが原因とされる親族間での殺人や無理心中事件」を指します。
(引用:湯原悦子(2011)「介護殺人の現状から見出せる介護者支援の課題」日本福祉大学社会福祉学部『日本福祉大学社会福祉論集』第125号, pp.41-65.)
湯原氏(日本福祉大学)は、[こうした介護殺人は、警察庁の犯罪統計によれば、2007年から2014年までの8年間に「介護・看病疲れ」を動機として検挙された殺人は356件、自殺関与は15件、傷害致死は21件であった。また殺人ではないが、内閣府の自殺統計によれば、2007年から2015年の9年間に「介護・看病疲れ」を動機とした自殺者数は2,515人、そのうち年齢が60歳以上の者は1,506人で、全体の6割を占めている。統計がとられるようになってからまだ10年も経過していませんが、この間に介護・看病疲れによる死亡がこれほどまで多く発生している。]と介護殺人の現状について述べられていました。
(引用:日本における介護殺人の現場と今後の課題 | nippon.com 最終閲覧:2024年12月25日)
「介護疲れ」や「将来の不安」等が要因で生まれてしまう介護殺人を防ぐために、そして介護をしつつ以前からの人間関係を維持でき、介護をしつつ余暇も楽しめる自分らしい生活を続けられる社会をつくるためには、「これから福祉・介護を担っていく学生の皆さんが専門職となって、こうした問題を抱えている人たちを支えて欲しい。だから、頑張って福祉や介護について学びを深めてほしい」と毒蝮先生からのエールが伝えられました。
つぎは、毒蝮先生が「俺は年を取ったら、ああいう年寄りになりたい!」と理想とする高齢者像について語られました。
一人目は、113歳で逝去されたGさん
Gさんは、当時のテレビ番組で表彰され、ピンクのフリルが付いたドレスを着て毒蝮先生の前に登場し、「俺は、あんなに元気なおばあちゃんを見たことがない!それに、今でもフランス語で「サン・トワ・マミー」を歌ってくれたのを覚えている。ああいう自分の趣味が続けられて、元気に過ごしたい」と語られました。
続いて二人目は、105歳で逝去された聖路加国際病院名誉医院長:日野原重明先生です。
毒蝮先生が腸閉塞で入院され、術後回復し芸能界に復帰された際、日野原先生との談話にて語られました。
日野原先生から「蝮さん、入院してよかったね。自分の価値がわかったでしょう。入院して退院できることを知っていれば、自分の価値が自ずとわかってくる。新聞や本を読んでいて、仕事はきちんと回っているでしょう」と問われました。
毒蝮先生は、「俺は、改めて仲間の存在、家族のありがたみを感じた。気にかけてもらえることは嬉しいことだ。俺も、最期までそういう人間でありたい」と語られました。
そして、日野原先生と晩年まで交流のあった毒蝮先生から学生に対して、「いのちとは、何ですか」と問いました。
この問いに対して、日野原先生は「命とは君たちが持っている時間である」という言葉を遺されています(参照:日野原重明著:十歳のきみへ―九十五歳のわたしから.冨山房インターナショナル;東京, 2006.)。
問われた質問に対して学生たちは、「理想とする高齢者像とは」、「いのちとは何か」を思慮し、レポートにまとめたと思います。
終わりに、毒蝮先生からのサプライズプレゼントがありました🎁
毒蝮先生が制作された『こなくてよかったサンタクロース』という絵本を読んでいただきました🎅
クリスマスの曲と背景に合わせて、絵本の世界観に引き込まれ、坊やとお母さんのやりとりが目に浮かびました。
今年度最後の講義でも、普段では学ぶことができことが多いにありました。
こうして毒蝮先生が語られた教えは、学生生活だけでなく、実習先や就職先でも役立つことでしょう❗
毒蝮先生、貴重な講義をありがとうございました。
年末ご多忙のおりではございますが、くれぐれもご自愛のうえ、よい年をお迎えください。
文:和田早織(助手)