第4回 客員教授毒蝮三太夫先生 講義:認知症の人への表現と伝達
24.12.09
皆さま、こんにちは。 社会福祉学科助手の和田です。
師走を迎え、山々が雪化粧をする頃、寒気も日増しに募りますがお変わりなくお過ごしでしょうか。
12月9日(月)客員教授毒蝮三太夫先生による4回目の講義が行われました。
はじめに、学生レポートから「私は、(バスの車内にて席をゆずったあと、)アナウンスにてお礼を言われても居た堪れない気持ちになってしまう」という学生の気持ちに対して、「受け取り方の違いによって、お互いにお節介になってしまう。さりげなく、その子が降りる停留所で、感謝を伝えたら居た堪れない気持ちにはならないかもしれない。」と相手へ伝える方法の難しさを語られました。
この振り返りから、「認知症の人への表現と伝達」について語ってくださいました。
毒蝮先生からの「皆さんは、表現することはうまい。だけど、伝えることはうまくできてますか」という問いかけに、首を捻った人も多いのではないでしょうか。
例えば、誰かと待ち合わせの約束をしたときに、時間や場所を伝え忘れていることはありませんか。
ふと、「あれ、場所はどこだっけ?」や「何時に待ち合わせだっけ?」と帰宅してから確認し忘れていることはありませんか。
または、待ち合わせ当日になって、約束した相手から「今、どこですか?」「何時に着きそうですか?」という連絡が届いていませんか。
このことから、「人は、表現するのはうまい。だけど、伝えることまではできていない。だから、伝達してこそ、表現が完成する」と語られました。
特に、認知症の人は、相手への表現や伝達することが難しいです。
認知症患者は、高齢者だけでなく、18~64歳までの若年性認知症患者もおり、患者数としては36,110人です。20代以下は485人。割合としては約1.3%にとどまり、60~64歳の若年性認知症患者は20,679人と推計されます。
また、疾患別による認知症の進行は、高齢者より約2~3倍のスピードで進行していきます。
(参照:若年性認知症とは|症状・年代別データ・チェックリスト・仕事を続けられるかどうかなど【介護のほんね】:2024年12月11日最終閲覧)
若年性認知症患者を含む認知症の人たちが表現しやすい、伝達しやすい環境づくりには、私たちの支援が必要です。
例えば、「重度の認知機能症害がある人へ断りを入れるときは、皆さんはどんな方法を取りますか。特に、介護現場に勤めようとする皆さんは、認知症の人の世界観を壊さないためにどうような対応を取りますか」という学生に対しての質問がありました。
毒蝮先生は、著:耕治人『天井から降る哀しい音』(講談社,東京.1986年11月28日)の一節から、「お互いが傷つかないためには、その人の世界観を壊さない。自分たちが名俳優(名女優)として、その人の世界観に入って演技し、言葉や言動を表現、伝達することが大切である」と語られました。
認知症の症状が進行し、暴言や暴力等の行為がみられる人たちもいます。
その人たちを否定をせず、ありのままを受け入ることは難しいことです。
しかし、その行為は本人の行為ではなく、認知症という疾患によってもたらされていることを理解しなくてはいけません。
認知症の人たちだけでなく、一人ひとりの世界観を理解するためには、私たちが名俳優となってお互いが傷つかないコミュニケーションを取っていく必要があると学ばせていただきました。
次回の毒蝮三太夫先生の講義にて語られる「福祉・介護」が楽しみです。
文:和田早織(助手)