私の研究成果をご紹介します(第一弾)
23.08.16
ごきげんよう、社会福祉学科教員の須田です。
今回のトピックは私の研究についてご紹介します。私は今、高齢者虐待への介入、対応について研究しています。特に家庭での高齢者虐待を発見した場合、どうやって介入するのか、どのような対応をすれば良いのか、そもそもどうやったら高齢者虐待を防げるのかを日々、考えています。
私は科学研究費助成事業(科研費と言います)の基盤研究(C)において「高齢者虐待防止法で保護されない虐待事例検証と広範な事例を救済しうる虐待概念の創出」(2019〜2022)というテーマで研究助成を受けていました。
高齢者虐待防止法では、「施設職員などが行なった高齢者虐待」と「家族などの養護者による高齢者虐待」の二つを明示しています。後者の養護者による高齢者虐待の場合、虐待を受けた高齢者と虐待行為を行なった養護者の間に「介護を行っていた(介護を受けていた)」関係がある上で虐待行為があると高齢者虐待となります。逆に養護関係がない(介護を行っていない)と高齢者虐待ではない、となるのです。加害者要件とも呼ばれます。高齢者が虐待行為を受けていたとしても高齢者虐待ではない、と認定されることがあるのです。
私たちの研究成果として、高齢者虐待防止法での虐待の要件では実態的虐待の3割以上が見落とされ、特に加害者が障害者の場合に虐待行為が虐待と認定されにくいことをつきとめました。さらにM市の通報台帳から、加害者は「親と同居する障害者」の頻度が比較的高い(通報事例の14.4%)ことがわかりました。
これは実際に虐待行為(暴力を振るわれるなど)を受けたが、加害者が養護者にあたらないためです。虐待と認定されない中には「障害を抱えている者」が行った虐待行為のため、高齢者虐待ではないと認定されているケースが潜在的にある、ということです。このことは高齢者の権利侵害に対応できていないことが推定されるのです。
高齢者虐待防止法の高齢者虐待の定義を変えないと実態的虐待に対応することができないのではないかと考えています。
今日の内容はここまで。次回に続きます。