【朗報】音楽学部卒業生が「第50回フランス音楽コンクール」声楽部門で第1位の栄冠!
20.12.26
「かがやく卒業生(10)」 にご登場いただいた卒業生の友光曜子さんが、先日行われた2020年度「第50回フランス音楽コンクール」(日仏音楽協会)声楽部門で見事第1位に輝きました(稲畑賞・毎日放送賞もあわせて受賞)。
おめでとうございます!
※コンクールに関する結果はこちら
友光さんは、聖徳大学音楽学部から大学院音楽文化研究科に進学、2018年から2019年にかけて、フランス・パリのスコラ・カントルム音楽院に留学されました。2019年クレ・ドール国際音楽コンクールで3位に入賞されています。
――友光さん、「第50回フランス音楽コンクール」第1位、おめでとうございます。率直な感想をお願いします。
有難うございます。今年は例年の3倍近い人数の出場者が集まり、予選突破もできないだろうと思っていた中でのまさかの受賞で、本当に嬉しいです。
――「第50回フランス音楽コンクール」での優勝は、聖徳大学やパリなどでの研鑽の成果が見事に発揮された素晴らしい結果ですね。
はい。特に選曲ではパリで先生から「これはあなたにぴったりの曲だ」と与えていただいたオペラ・アリアをはじめ、パリでもらった贈り物のような大切な曲を選びました。
「かがやく卒業生(10)」でご紹介いただいた時にもお話した、聖徳大学で学んだ「きちんとやる」という事の積み重ねが、沢山の素晴らしい出場者の中でも1位という結果を残せたのだと思います。
聖徳大学での演奏会での一コマ、ピアノは鳥井俊之先生
――コンクールの様子を少し教えてください。
予選はフォーレの歌曲とベルリオーズのオペラのアリアを歌いました。そして、本選は2人以上の作曲家による歌曲という指定でしたので、シャブリエ、アーン、プーランクの作品を歌いました。
――もしかしたら、フランス音楽を深く勉強しないと、あまり馴染みのない作曲家だと思う方もいるかもしれませんね。
ええ、そうかもしれません。私の場合、本選のプーランク以外は、2021年1月に予定していたリサイタルのために準備していた曲でした。残念ながら、このリサイタルは新型コロナウイルスの影響で中止にしたのですが、かなり前から練習やレッスンで歌ってきたので、コンクールで歌えたことは幸せでした。
――リサイタル用に曲を準備していたとなると、相当、歌い込んでありましたか?
はい、コンクールに向けてピアニストの田中健さんと時間をかけて曲を仕上げていきました。その時間は、誰にも負けなかったという自負があります。
特に私が選んだ曲はピアノパートがとても美しく、ピアノを聴いてほしくて、そして私が聴きたくて選んだ曲ばかりです。
――曲に対する思いも深かったのですね?
「ピアノと一体になってこの曲の美しさを表現したい、堪能したい」と思えたことがコンクール特有の嫌な緊張感につながらなかった要因の一つであるとも思います。
他の出場者に比べてこれといった優れた強みを持たない私が1位を頂けた理由は、曲への情熱、愛情ゆえだと思います。
――コンクールの雰囲気はいかがでしたか? 今年は新型コロナウイルスのために、何か特別な空気感があったのではないかと推察しますが。
小さなサロンが会場でしたので、大人数が会場に集まらないよう、運営側の熱意のこもった工夫がされていました。例年だと予選も本選も一般公開されているのですが、今回の一般公開は先着10名の予約制という形で、お客様方も熱心に耳を傾けてくださっているように感じました。
>>✿雑誌『音楽現代』2021年1月号に関する記事
グラビア記事に、第1位の友光さんの演奏の写真も掲載
――授賞式はいかがでしたか?
それが…。
実は、コロナ禍のため、授賞式は行われなかったのです。
――あらまあ、そうなのですか。それは少し残念ですね。
そうですね~。でも、留学先のカナダから一時帰国してこのコンクールを受けた友人に、5年ぶりに会えたのは嬉しかったです。
――年が明けると、本選での演奏がYouTubeで公開されるとか。
はい、まもなく公開されると思います。公開されましたらお知らせしますので、このブログをご覧の皆様もぜひ覗いてみてくださいね。
※追記:友光曜子さんの本選での演奏がYouTubeで公開されました(2021年2月15日記)
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――以前にも「かがやく卒業生」シリーズにご登場いただきました。あれから1年4か月、音楽に対する姿勢や思いで変化はありましたか?
世界の状況が急激に変わってしまい、音楽家だけでなく多くの人々が苦難に直面しています。世界史や音楽史などで知識として触れていたペストやスペイン風邪といった疫病が蔓延しているのと似た状況に、今自分たちがおかれています。
今改めて当時の風刺画を見たり「メメント・モリ(死を思え)」という言葉に触れたりすると、当時の苦しみと恐怖をより生々しく実感します。それでも音楽をはじめとする文化は絶えずに今も残り、生まれています。
――そうですね、すべての人が複雑な思いを抱いていますね。
私の中では、私が歌う歌、聴く音楽に対して畏怖の念のようなものを抱くようになりました。この1年4か月の間あまりに多くの事が変わってしまいましたが、それでもモーツァルトは歌われ続け、ベートーヴェンは奏でられ続け、この先も求められるのだろうという当たり前のことがどれほど凄い事かと考え込んでしまう時間が増えました。自然と歌の練習にも緊張感が増しました。
――厳しい社会情勢が続きますが、先日は、今年海外研修に行くことのできなかった3年生を対象とした「代替講座」にご登壇いただき、パリでの生活についてお話しいただきましたね。
はい。学生の皆さんが熱心に聴いてくださり、嬉しかったです。きっと学生の皆さんにとって、パリは非日常の存在だと思いますが、その中で営まれる日常を感じてほしいと思い、私が実際にパリで撮った友人の写真などを見ていただきました。それとともに、パリの治安の悪さもお話しました。
私にとって学部3年生の時の海外研修はとっても大きな経験だったので、今年の3年生に少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。
――最後に、このブログを見てくださっている音楽学部の後輩たち、音楽の道へ進もうかと考えておられる高校生の方々に、あらためてメッセージをお願いします。
私たちより上手く演奏できる人は星の数ほどいます。それでも私たちが音楽を演奏する意味は何なのか。その「意味」は人それぞれ違うと思います。
私より素敵な演奏家はたくさんいますが、私が歌う事で喜んでくれる人がいる、私の演奏だから聴きたいと言ってくれる人がいる。たとえそんな人がいなくても、私の音楽は私にしかできません。子供のころ通っていた合唱団の先生が「何も優れたところが無くても、ただそこにいる、それだけで他のだれにも代われない「個性」なんだ」とおっしゃっていました。[下に続く>>]
ある演奏会での一コマ、ピアノは卒業生の中川佳織さん
きっとこのブログをご覧の皆さんは色んな形で音楽を愛しているのだと思います。あなたの奏でる音楽がどんなに未熟でも、苦しそうな高音でも、かすれた低音でも、それは紛れもなくあなたにしか出せない音で、だれにも奪われないあなたにしか奏でられない音楽です。
自分自身と音楽を愛し、より美しく演奏しようと努力すれば必ず音楽は愛を返してくれます。どうか皆様にとって音楽が愛に満ちたものでありますように。
――あらためて、おめでとうございます。益々のご活躍を期待しています。