どのような逆境も新たな力に ― 新年のご挨拶
23.01.09
心理・福祉学部社会福祉学科長
山田千香子
旧年中は大変お世話になり有難うございました。
年頭にあたり謹んで本年の皆様方のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。
コロナ禍に入ってから、早くも三回目の新年を迎えました。新たな変異株の登場に今年は第八波が懸念される状況にあります。「After Corona」になることを期待しながらも、日常生活は感染拡大防止策を優先とした生活の工夫が継続的に必要であり、既に長期的な「With Corona」の時代に突入しているようです。
長期的なコロナ禍が続く中において、頻発する地震や大雨、台風による自然災害において、また、昨年来「戦争」という言葉が身近なものとして報道されるようになって、多くの命が失われる現実に直面し、「命」のはかなさや尊さについて考えさせられる機会が多くなりました。益々福祉の力が求められ、福祉の重要性が増している時代となっています。社会福祉は、尊厳ある人生、人権が守られる社会の実現のためにひとりの人の地域社会でのよりよい生活を実現するための直接的、間接的なサービスを提供するものです。どのような時代であっても、人々の暮らしが健康で幸福であることを支援していくことが基本にあります。
詩人吉野弘さんの詩集『風が吹くと』(1977年)に、生命(いのち)を詠った次の一節があります。社会の成り立ちの基本的概念、そして「和」という建学理念、さらに、福祉の仕事や役割と結び付けて考えることができます。本年が、少しでも、この詩の中の小さな「虻(あぶ)の働き」ができる一年でありますように。
「生命(いのち)は」
生命は 自分自身だけでは完結できないように
つくられているらしい
花も めしべとおしべが揃っているだけでは 不充分で
虫や風が訪れて めしべとおしべを仲立ちする
生命はすべて その中に欠如を抱(いだ)き
それを他者から満たしてもらうのだ
私は今日 どこかの花のための 虻だったかもしれない
そして明日は誰かが 私という花のための虻であるかもしれない
作:吉野弘(詩集『風が吹くと』1977年所収)
(写真2葉:山田撮影)