大切な栄養素コレステロール
17.10.27
(H29年10月24日)
「生理学実習Ⅱ」で、学生さんの血液中の血清総コレステロール、HDL-コレステロールを測定しました。
酵素反応により生成された青い色素を吸光度計で測定し、その値を用いて検量線が書けました(2つのグラフを同時に書き示しています)。ここから血清中の濃度がわかります。
この2つの検査項目は、中性脂肪とならんで「脂質異常症」の診断に欠かせないものです。しかし、私たちの体内に、コレステロールという名前の物質は1種類しか存在しません。血液中を流れているのも1種類のコレステロールです。LDL-コレステロール、HDL-コレステロールという名称は、臨床検査においてそれぞれ「LDLというリポタンパクが運んでいるコレステロール」、「HDLというリポタンパクが運んでいるコレステロール」という意味で使っているもので、そのような名前の化合物が存在するわけではありません。コレステロールは、すべての細胞の生体膜を構成し、胆汁酸、ステロイドホルモン、ビタミンD3を作る材料となる大切な栄養素ですから、そこに「いい」も「わるい」もありません。ただ、「動脈硬化のリスクを上げる因子」として、LDL-コレステロール高値、HDL-コレステロール低値という科学的根拠があるのです。
私たちの食生活に関していえば、「日本人の食事摂取基準2015年版」(厚生労働省)から、コレステロールの摂取上限値は撤廃されました。健康な人なら、コレステロールを含む食品を多く食べても、血中コレステロール値にはほとんど影響がないからです。それは、外部から入ってきたコレステロール量に合わせて、体内でコレステロールを合成している肝臓がその合成量を調整するしくみが正常に働くからです。ただ、遺伝的体質などでこのしくみが正しく働かないと動脈硬化を起こしやすくなることがわかっており、病的に高値ならばコレステロールの摂取量は制限しなければなりません。
いずれにせよ、「栄養素は偏りなく過不足なく摂る」が基本原則です。好きなものだけたくさん食べる、ダイエットだから食べない、という食生活を若い頃から続けていると年を取ってから後悔することになります。気をつけましょう。
(医科栄養学研究室)