人間栄養学部・人間栄養学科 │ 聖徳大学

鉄の必要量研究の歴史:公衆衛生学研究室の研究から

18.12.13

公衆衛生学研究室の横井ゼミでは、微量栄養素の必要量の決定法について研究しています。昨年の本欄では、女性に多い「貧血のない鉄欠乏」が疲労を招くことを紹介しました。ここでは、鉄の必要量研究の歴史を紹介します。

人が健康に生活するためには、栄養素を摂取する必要があります。健康を維持するために摂取しなければならない栄養素の最小の量が、必要量です。必要量の決定は現代の栄養学の中心的課題です。わが国では、栄養学の成果に基づき食事摂取基準が定められています。世界保健機関(WHO)やアメリカ合衆国、イギリスなどの国々で、同様の目的の基準が定められています。

鉄は古代ローマ帝国で脾臓の病気の特効薬として使用されていました。鉄の欠乏症として鉄欠乏性貧血が有名ですが、鉄欠乏症の概念は16世紀の医学者でかつ化学者であるパラケルサスに遡ります。鉄の必要量に関する研究は、19世紀に始まり、現在に続いています。

鉄の必要量の推定法には現在3種類の方法があります。出納法は、人が食事から摂取した鉄の量と排泄された鉄の量が釣り合う量を見つけて必要量とするものです。要因加算法は、体から失われる鉄の量を、鉄の吸収率で割り算して必要量を求めるもので、食事摂取基準で用いられています。集団データ解析法は、集団における鉄欠乏の人の割合と食事から摂取された鉄の量の分布から、数理解析的に必要量を求める方法で、本ゼミで開発した最新の方法です。

ここで紹介した内容を詳しく記載した当研究室の論文が、微量元素研究の国際専門誌Biological Trace Element Researchに掲載されました。栄養素の必要量に興味を持たれた方の記憶の片隅に留めて頂けると幸いです。

(公衆衛生学研究室)

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